AIエージェントで営業メール対応とCRM運用を効率化した社内PoC
営業部門では、受信メール、リード情報、過去の対応履歴が複数の場所に分かれていると、初動対応のスピードやフォローアップの質にばらつきが出やすくなります。本PoCでは、営業担当者の判断を置き換えるのではなく、判断前の整理作業をAIエージェントで支援することを目的に、メール要約、リード分類、優先度判定、返信ドラフト作成、CRM更新支援を一つの流れとして整備しました。
本件はSMILE社内の営業・マーケティング運用を題材としたPoCです。Gmail、Odoo CRM、Google Drive を連携し、メールの内容をもとに次のアクション候補を提示しながら、人が最終判断を行う運用を前提に設計しました。
- 対象: 社内営業・マーケティングチームのメール/リード対応
- 目的: 初動対応の効率化、重要リードの見落とし防止、フォローアップ運用の標準化
- 構成: Gmail、Odoo CRM、Google Drive、PythonベースのAIワークフロー、LLM
- 開発期間: 5か月
- 開発体制: 3名 / 13MM
- 運用方針: 社外送信や重要更新は人が確認して確定
- 現段階: 社内PoCとして運用検証と改善を継続
お客様の課題
営業メールやリード情報がメールボックス、CRM、社内ファイルなどに分かれていると、担当者は毎回内容を読み直し、優先度を考え、過去の対応履歴を確認したうえで次の行動を判断する必要があります。案件数が増えるほど、この確認作業だけで時間を使いやすくなります。
また、誰がどのリードをいつフォローすべきかが明確でないと、対応の遅れや抜け漏れが発生しやすくなります。特に、問い合わせ内容が短時間に多く届く状況では、重要なメールが他の連絡に埋もれるリスクもあります。
さらに、AIを営業業務に使う場合は、効率化だけでなく、誤分類や不適切な返信案によるリスクも考慮しなければなりません。そのため、単純な自動送信ではなく、人の判断を支える仕組みとして設計する必要がありました。
プロジェクトの目的
本プロジェクトの目的は、営業担当者が最終判断に集中できるよう、メール確認からフォローアップ準備までの前処理を効率化することでした。
具体的には、受信メールの要点整理、リード分類、優先度の目安提示、返信ドラフト作成、CRM反映候補の整理を通じて、日々の営業運用を標準化し、対応スピードを高めることを目指しました。
あわせて、AIが自律的に判断を完結させるのではなく、人が確認しやすい形で候補を提示する運用モデルを検証することも重要なテーマでした。
SMILEの対応範囲
SMILEは、営業メール対応の現状分析、Gmail・Odoo CRM・Google Drive を含むワークフロー整理、分類ルール設計、AIエージェントのプロンプト設計、要約・優先度判定・ドラフト生成機能の実装、レビュー用ダッシュボード整備、検証・改善までを担当しました。
また、AIの出力をそのまま外部送信や重要更新に使わず、必ず人が確認できるレビュー工程を設けることで、実運用に載せやすい仕組みへと整理しました。
開発・改善のポイント
今回のPoCで重視したのは、AIを追加すること自体ではなく、営業業務のどこにAIを入れると効果が高く、どこは人の判断を残すべきかを明確にすることでした。
まず、受信メールをそのまま処理対象にするのではなく、件名、本文、送信者、過去のやり取り、CRM上の既存情報などを踏まえて、営業担当者が一目で状況を把握できる要約形式に整理しました。次に、問い合わせ内容や温度感に応じてリード分類と優先度の候補を提示し、後続の対応順を決めやすくしました。
さらに、返信ドラフトやCRM更新候補の作成では、AIだけに任せず、ルールベースの条件判定と組み合わせる構成を採用しました。これにより、定型的な処理は効率化しつつ、重要判断や社外コミュニケーションでは人による確認を維持しています。
使用技術
メール連携
Gmail を用いた受信メール取得、スレッド確認、下書き連携のための運用設計。
CRM連携
Odoo CRM を活用し、リード情報、対応履歴、フォローアップ状況を確認・更新するワークフローを整理。
ドキュメント連携
Google Drive を用いて補足資料や営業関連ドキュメントを参照しやすい構成を設計。
AIワークフロー
PythonベースのAI Agent ワークフローにより、要約、分類、優先度判定、返信ドラフト生成を実装。
判定ロジック
LLM による自然言語処理とルールベース判定を組み合わせ、営業現場で使いやすい出力へ調整。
技術的に難しかった点と対応
難しかった点は、営業メールの内容が毎回一定ではなく、短い問い合わせ、複数要件を含む相談、過去の会話を前提にした返信など、文脈の揺れが大きいことでした。単純なキーワード判定だけでは分類の精度が安定せず、逆にLLMだけに依存すると、根拠の薄い判定や過剰な自動化につながる懸念がありました。
そのため、SMILEでは、分類や優先度判定にルールベースとAIの両方を使う構成を採用しました。たとえば、特定の問い合わせ種別、既存顧客かどうか、返信期限に関わる表現の有無などはルールで補強し、要約やドラフト作成のように文脈理解が重要な部分はAIを活用する形です。
また、すべてを自動実行せず、メール送信や重要なCRM更新はレビュー画面上で人が確定できるようにしました。これにより、効率化と運用安全性の両立を図っています。
導入効果
本PoCにより、営業担当者は受信メールの内容把握、優先度検討、返信準備、CRM反映候補の整理といった前処理を短時間で進めやすくなります。特に、重要リードの見落とし防止、フォローアップ観点の標準化、対応初動の均一化に効果が期待できます。
また、AIが人の判断を支える位置づけを明確にしたことで、効率化を進めながらも、対外コミュニケーションの品質や運用上の安心感を保ちやすい構成となりました。
オフショア開発体制のポイント
AIを活用した営業支援では、単にモデルをつなぐだけでなく、業務理解、ルール整理、レビュー導線、改善サイクルまで含めて設計することが重要です。SMILEでは、日本側とベトナム側が役割を分担しながら、業務フロー確認、出力品質レビュー、プロンプト調整、検証結果の反映を繰り返し行える体制を整えています。
こうした進め方により、PoC段階でも実運用に近い形で改善ポイントを見つけやすく、将来の本格展開に向けた検討材料を蓄積しやすくなります。
まとめ
営業メール対応やCRM運用の効率化では、AIにすべてを任せることよりも、人が判断しやすい形で情報を整理し、次の行動を支援することが重要です。本PoCは、AIエージェントを営業活動の補助役として組み込み、メール要約、リード分類、優先度判定、返信ドラフト作成を一体で支援することで、営業運用の初動改善につなげた事例といえます。
営業・マーケティング領域でAI活用を検討する企業にとっても、人のレビューを前提とした段階的な導入設計は、現実的なアプローチの一つになります。
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