Android OSのカスタマイズで、通信事業者向けスマートフォンの提供要件に対応した開発事例
米国市場向けのスマートフォンでは、一般的なAndroidアプリ開発だけでは対応しきれない要件が発生します。通信事業者ごとのSIMロック制御、ブランド仕様への対応、標準アプリの調整、さらにRCSやWi‑Fi Callingといった利用環境に関わる機能まで、端末レベルで整合を取る必要があります。SMILEは、こうした要求に対し、AOSPおよびAndroid Frameworkレベルのカスタマイズと標準アプリ開発を通じて、提供要件に沿った端末づくりを支援しました。
- 対象: 米国通信事業者向けスマートフォン開発
- 課題: SIMロック制御、ブランド対応、標準アプリ調整、米国向け機能要件への対応
- 提案内容: Android OSカスタマイズ、standard app開発、実機検証、互換性修正、リリース支援
- 対応範囲: AOSP/Android Framework、システムサービス、ネイティブアプリ、UI調整、実機検証、互換性修正
- 期間: 18か月
- 体制: 最大12名 / 180MM
- 想定規模: 5モデルの端末、3つのAndroidバージョン、多数のstandard app
お客様の課題
通信事業者向け端末では、一般的なスマートフォン製品よりも厳密な提供条件が求められます。たとえば、特定のProviderのSIMのみを利用可能にし、一定条件を満たした場合にのみCode Unlockで他社SIMを使えるようにするなど、端末の振る舞いそのものを制御しなければならない場面があります。さらに、ホーム画面や標準アプリ、各種設定画面にもブランド要件が反映されるため、アプリ単位の改修だけでは対応できません。
加えて、RCSやWi‑Fi Callingのように、米国市場で重視される通信機能へ適合させる必要もありました。端末ごと、OSバージョンごとに差異が発生しやすく、同じ仕様でも実機上では予期しない不整合が出ることがあります。そのため、OS、framework、standard app、実機検証を一体で扱える体制が必要でした。
プロジェクトの目的
本プロジェクトの目的は、通信事業者の提供要件に適合したスマートフォンを安定してリリースできるようにすることでした。端末のロック制御、ブランド仕様、標準アプリ、通信機能を含めて必要な調整を行い、複数モデル・複数OSバージョンでも整合を取れる開発基盤を整えることが求められました。
同時に、実機検証を通じて不具合や互換性差異を早い段階で検出し、各releaseで必要な修正を積み重ねられる体制を作ることも重要なテーマでした。
SMILEの対応範囲
SMILEは、AOSP/Android Frameworkレベルでのカスタマイズ、標準アプリの開発・改修、UI/UX対応、端末検証、互換性対応、リリース支援を担当しました。単なるアプリケーション開発にとどまらず、OSとアプリケーションの境界領域における実装や、端末固有の動作検証まで含めて支援しています。
また、仕様書の読解や要件整理、モデル差異・Android version差異の確認も継続的に行い、毎回のreleaseで必要な観点を整理しながら開発を進めました。
開発・改善のポイント
本件で重要だったのは、Androidアプリを追加開発することではなく、AOSPとAndroid Frameworkを前提に、端末全体の振る舞いを通信事業者要件へ合わせ込むことでした。SIMロック制御やbrand customizationはOS寄りの領域にかかるため、通常のアプリ開発とは異なる深い理解が必要になります。
また、同じ仕様でもモデルごと、OSバージョンごとに差異が出るため、実装と実機検証を往復しながら互換性を詰めていく進め方が欠かせませんでした。SMILEは、標準アプリ、framework、hardware interfaceをまたぐ観点で問題を切り分け、release単位で安定度を高めています。
さらに、顧客から提示される大量の仕様書を正確に読み取り、優先度や影響範囲を整理することも大きなポイントでした。仕様理解、実装、検証を分断せず、同じチームでつなぐことで、要件の取りこぼしを抑えやすい体制を構築しています。
使用技術
フレームワーク/OS
Android AOSP、Android Framework を用い、OSレベルおよびsystem serviceレベルのカスタマイズを実施。端末全体の挙動や標準機能に関わる調整へ対応しました。
アプリケーション
Java、Kotlin によりstandard appや端末向け機能を開発。Provider向けUI調整や標準アプリの挙動改善も含めて実装しています。
ネイティブ/低レイヤ
C/C++ を用いて、HALやhardware interfaceに近い領域を含む調査・調整に対応。端末固有差分の確認や互換性検証にも活用しました。
データ管理
SQLite / Room を利用し、端末内データや設定情報の管理に対応。
検証
実機による手動テストに加え、通信事業者向けの専用試験機を用いた端末検証、互換性試験、性能試験を実施しました。
技術的に難しかった点と対応
最大の難所は、複数モデル・複数Android versionにまたがって、同じ提供要件を破綻なく満たすことでした。OSやframeworkの差異、端末ごとのhardware behavior、標準アプリの依存関係が絡むため、あるモデルで通る修正が別モデルでは副作用を生む可能性があります。
もう一つの難しさは、要件の複雑さです。通信機能、ロック制御、ブランド仕様、標準アプリ、実機試験条件などが大量のspecとして提示されるため、読み違えや解釈漏れがそのまま品質リスクになります。SMILEは、仕様の整理、影響範囲の分解、実機確認、release単位の差分検証を繰り返しながら、互換性の高い状態へ収束させていきました。
導入効果
本件では、通信事業者向け端末に必要なOSカスタマイズ、standard app調整、実機検証の一連の流れを通じて、release前にモデル差異やOS差異による不具合を検出・修正できる体制を支えました。結果として、提供要件に沿った端末開発を継続しやすくなり、複数モデルをまたぐ品質確保に寄与しています。
また、Android nativeをOS/frameworkレベルで扱える体制を持つことで、一般的なモバイルアプリ開発だけでは対応しづらい要件にも柔軟に対応できる点が、大きな価値となりました。
オフショア開発体制のポイント
Android OS customization案件では、単にコードを書く力だけでなく、膨大な仕様書の理解、端末差異の整理、実機検証の積み上げが重要です。SMILEは、要件整理から実装、実機テスト、release supportまでを一連の流れで扱い、日本向け・海外向け双方のプロジェクトで通用する品質管理を進めてきました。
特に、BrSEやリーダー層が仕様の読み解きと開発チームの橋渡しを行い、モデル差異やpriorityを整理しながら進めることで、複雑なモバイル案件でも安定した開発サイクルを回しやすくしています。
まとめ
本事例は、通信事業者向けスマートフォンに求められる高度なAndroid OS customizationへ対応した開発支援の一例です。AOSP/Android Framework、standard app、実機検証を一体で扱うことで、端末レベルの要件に応えながら複数モデル・複数OSバージョンの品質確保を進めました。Android nativeを深く扱う開発体制が必要な案件において、SMILEの技術力を示す取り組みといえます。
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